自分の強みを理解する事が出来れば、同時に他人の強みも理解する事が出来るようになります。
他人の強みを理解する事が出来るようになると、会社組織の中で「あなたと上司」との関係だったり、「あなたと部下」との関係が改善され良い方向に動き出すようになります。
また、自分の強みを理解する事が出来るようになると、あなたが得意なリーダーシップの執り方が見えてくるようになります。
人は自分の強み(=個性)がポジティブに発揮されると、最大限の力が発揮出来るようになりますので、自分の強み(=個性)を知ることで、人生を素晴らしいものに出来るようになるでしょう。
本書を購入すると本格的な診断も出来ますが、下記に無料の簡易診断のURLも貼っておきますので、本記事を読んで頂く際の参考にして頂ければと思います。
【簡易診断URL】https://www.ffs-uchukyodai.com/spacebr/trial/TrialRegist.ffsm
本書はこんな人にお薦め
- 自分の強みを知りたい人
- 自分の強みを仕事で活かしたい人
- 人との付き合い方を学びたい人
- 周りの人の個性を深く理解したい人
- よりよい意思決定をするポイントを会得したい人
はじめに
人気コミック「宇宙兄弟」とFFS理論を組み合わせた個性診断
人気コミック「宇宙兄弟」を題材にして、人の個性への理解を深め、個性の活かし方を「宇宙兄弟」のキャラクター25人に準えながら、FFS理論で分かりやすく説明しています。
この理論で診断される個性を知れば、自分の強みや弱みだけでなく、「なぜこの場面で相手がこんな行動や考え方をするのか」「なぜ相手は不愉快になったのか」が分かります。
自分は「よかれ」と配慮したつもりが、異なる個性の人には「ストレッサー」(ストレスを引き起こす要因)になる、という事を理解する事が出来るのです。
自分の個性を知り、相手の個性を知れば、少なくとも相手をストレス状態に追い込むことなく対話が出来るようになります。
それは、相手にとってはスムーズにあなたの言葉を理解出来る事につながり、関係の改善、向上につながります。
例えば、JAXA宇宙飛行士選考試験現場で、次選考に残れる2人を試験受験者同士が選ばなければならないシーンで、主人公の南波 六太が「グーみたいな奴がいて、チョキみたいな奴もいて、パーみたいな奴もいる。誰が一番強いか答えを知っている奴いるか…?」と皆に問いかけるシーンがあります。
これは、南波 六太の「受容性」の因子が大きく関係している発言なのですが、「凝縮性」の因子や「弁別性」の因子が高い人(これから記事内で説明していきます)には、なかなか受け入れられない発言だと思います。
自分とは違う個性を持つ人は理解しにくいものですが、これについても「宇宙兄弟」の登場する多彩な個性のキャラクターたちがヒントを与えてくれるはずです。
職場の上司や同僚、後輩、仕事で出会った人たちなど、これまで理解出来なかった相手を理解するための参考にして頂けると思います。
あなたの知らないあなたの強みの内容紹介
FFS理論とは?
FFS理論(開発者:小林 惠智博士)は、ストレス理論をベースに研究されたものです。
人によってストレッサー(ストレスになる刺激)は違います。
例えば、同じ広さの部屋にいても、「広々として心地よい」と感じる人もいれば、「広すぎて不安」とストレスに感じる人もいます。
つまり、環境や刺激に対する感じ方や捉え方は人それぞれ違います。
その感じ方や捉え方の特性を5つの因子として軽量化したものが、FFS理論です。
FFS診断を受けるメリットとは?
質問に答えると、5つの因子とストレス状態が数値化されます。
それらの数値から、あなたの個性に影響を与えている因子を特定します。
自己理解が深まるのはもちろん、他者との違いも明らかになり、すれ違いの原因究明やよりよいコミュニケーションの取り方の指南にお役立て頂けます。
5つの因子とは?
5つの因子のうち、「保全性」と「拡散性」は気質(先天的)に起因し、残る3つの因子は社会的(後天的)な影響が大きいと考えられます。
ヒューマンロジック研究所の調査によると、気質起因の因子だけに着目すると、日本人の65%は「保全性」が高く、35%は「拡散性」が高いタイプに分けられます。
また、「凝縮性」と「受容性」を比較すると、「凝縮性」の因子が高い人が20%、「受容性」は80%となります。
5つの因子を上位2つ(第一因子、第二因子)で見ると、「受容性」「保全性」の人が55%、「受容性」「拡散性」が25%、「凝縮性」「保全性」が10%、「凝縮性」「拡散性」が10%という出現率になります。
どの因子が良い/悪いということではなく、あくまでご自身の思考行動パターンに影響を与えている因子を把握するものです。
第一因子(数値が一番高い因子)が最も影響を与えますので、順番と二番目、三番目の因子との差分を見ることが重要です。
①凝縮性因子
固定・強化させようとする力の源泉となる因子。
凝縮性は、文字通り自らの考えを固めようとする力のこと。こだわりが強く、自分の中で明確な価値規範を持っています。他人に流されずブレない一方で、自分の価値観に合わないものはなかなか受け入れない頑固な一面もあります。日本人にはかなり少ないタイプです。
【ポジティブ】
- 決断力があってグイグイと推進している
- 責任感があって、頼んだことも最後は自分で引き受けている
【ストレッサー】
- 頭ごなしに否定されること
【ネガティブ】
- 独善的、支配的、排他的
②受容性因子
外部を受け入れようとする力の源泉となる因子。
受容性は、無条件に受け入れる力です。優しくて面倒見が良く、柔軟性があるのが特徴です。無理難題も聞いてくれるので、経験値が高いと頼もしい存在ですが、経験値が少ない場合、周りの要望を全部受け入れてしまい、キャパオーバーになることもあります。
【ポジティブ】
- 柔軟な対応力で成果につなげている
- 面倒見良く関わって、気配りしながら動いている
【ストレッサー】
- 反応がないこと
- 役に立っていない時
- 存在がないがしろにされること
【ネガティブ】
- 介入的、自虐的、逃避的
③弁別性因子
相反する二律にはっきりと分けようとする力の源泉となる因子。
弁別性は、白黒はっきりさせる力です。合理的で計算的であることも特徴です。ドライで、常にどうすれば合理的なのかを考えて行動します。物事を都合よく割り切ることができる一方で、感情があまり介入しないため機械的で冷たく見られることもあります。
【ポジティブ】
- 最短距離で無駄なく淡々と進めている
- 判断は合理的で、結論を出すのが早い(情報がない時は、判断しない)
【ストレッサー】
- 理不尽さ、割り切れない状態、感覚的な時
【ネガティブ】
- 機械的、詭弁的、ドライ(冷たい)
④拡散性因子
飛び散っていこうとする力の源泉となる因子。
拡散性は、飛び出していこうとする力です。活発で行動力があります。直接的で、面白いことなら周囲を気にせずどんどん取り組むので、「挑戦的だ」と評価される一方、飽きっぽいため周りを振り回すタイプでもあります。
【ポジティブ】
- 大胆な発想で変革を進めている
- 誰もしないことを平気でやっている
【ストレッサー】
- 動けない状態、拘束されること、団体行動を強いられる時
【ネガティブ】
- 衝動的、破壊的、攻撃的
⑤保全性因子
維持するために工夫改善していく力の源泉となる因子。
保全性は、維持しながら積み上げる力です。プランを立て、工夫しながらコツコツと進めていくのが得意です。組織を作るのがうまく、周りと強調しながら動くことができます。慎重で安全第一なため、なかなか行動することができない時もあります。
【ポジティブ】
- きちんと計画通りに進めて、制度は高い
- 皆ができることを、自分も出来るようにしようとする
【ストレッサー】
- 明確な指針がない時、先が見えない時、急な変更
【ネガティブ】
- 追随的、妥協的、拒絶的
因子の組み合わせの特性とは?
「宇宙兄弟」の主人公である南波 六太を例にとると、「受容性・保全性・弁別性」が高い人だと言えます。
この順列の人はどんな特性の持ち主なのでしょうか?
「受容性」が高い人は、柔軟で面倒見が良い。
「保全性」の高い人は、変革よりは、身近なところから目標を立てて、確実に進めていくことが得意な人。
「弁別性」の高さから、合理的な判断も出来る人材と思われます。
つまり、仕事においては、周囲との関係を大切にしつつ、継続的に工夫改善を行うことに向いていそうです。そして、一つの枠組みの中で無駄なく合理的に仕上げていくタイプ。安定的に重宝される人材です。一方で、変化や挑戦には尻込みしがちかもしれません。
このように、第一因子・第二因子・第三因子を関連付けて理解するといいでしょう。
キャラクターマトリックス
本書での本格的なFFS診断も受けた人も、無料の簡易的なFFS診断を受けた人も、自分の個性に近いキャラクターが分かったと思います。
キャラクターマトリックスでは、「凝縮性」「受容性」「拡散性」「保全性」の4つの因子から、どのキャラクターがどの当たりに位置づいているのかが分かるようになっています。
各キャラクター紹介
私たちは、自分の個性と似ている人に共感を覚えます。
ですから、自分と「個性が似ている」キャラクターを見つけて、その人物が直面する課題やそれに対する解決策、チームでの活躍の場面から、自分の職場やビジネスシーンでの問題解決のヒントを得る事が出来ます。
その人物を鏡にして、自己理解につなげて頂けたら幸いです。
自己理解(あなたの強みの活かし方)
日本人の特徴は、まず「受容性」が高いこと。それに続くのが「保全性」と「拡散性」です。
次に、日本人を「保全性」と「拡散性」の高低だけで比較すると、「保全性」の高い人は65%、「拡散性」は35%と、ほぼ2:1になります。
つまり、日本の社会は「受容性と保全性の高い人が55%、受容性と拡散性の高い人が25%」と大きく2つに分ける事が出来ます。
保全性の強み
事前の情報収集だけで満足して、行動に移さない…
これは、物事を慎重に進めたい「保全性」の高い人が陥りがちな罠です。
その一方で、徹底した情報収集は、「保全性」の高い人にとって強力な武器になり得ます。
つまり、「保全性」の高い人は使い方を知らないだけで、すでに武器を持っているのです。
【保全性の強み】
- 情報を幅広く集めて体系化するのが得意
- 自分の専門領域で徹底的に情報を集め、理論武装しよう
- 「この領域なら誰にも負けない」と思えれば、自身を持って戦える
拡散性の強み
「拡散性」の高い人は、基本的に「面白いことをしたい」という気持ちが強く、自分の興味で動きます。「ワクワクしたい」という気持ちが、その人を突き動かすのです。
最初は自分軸ですが、「誰もなし得ないことを実現したい」「オンリーワンでありたい」と動いていくうちに、他人軸へと変わっていきます。
【拡散性の強み】
- 「面白いことをしたい」が夢実現の動機となる
受容性の強み
「受容性」の高い人は、周りの状況を柔軟に受け入れようとするために、八方美人に陥ることがあり、自分が追求したいテーマを決めきれないという側面があります。
このタイプは人に対して寛容で肯定的であり、「人の喜びが自分の喜び」と感じることが一番の特徴です。従って、自分軸で動くよりも、相手軸で動きやすいのです。
人生に明確な目標や志を持ちやすい個性の人もいれば、相手軸で物事を考える「受容性」の高い人のように、「自分の夢」を語りにくい人もいます。
でも、それでいいのです。自分の個性をポジティブに発揮していけば、夢や目標は自然に育まれていきます。
【受容性の強み】
- 「誰かのため」に人生を懸ける事が出来る
凝縮性の強み
凝縮性の高い人は、こだわりが強く、「こうあるべき」という価値観を持ちやすい特性があります。
例えば、「世の中はこうあらねばならない」と信じている人が、そうではない現状を理解すると、「世の中を正すこと」が自分に課せられた使命だと思いう傾向があります。
そのため、社会的あるいは文化的な課題解決を自分の「すべきこと」に設定しやすいのです。
教育現場の荒廃、インフラの不整備、環境の悪化や温暖化、貧困、難民などに対する問題意識を持ち、解決しようと動きます。
【凝縮性の強み】
- 「こうあるべき」の実現を自分の使命と考える
他者理解(上司を味方につける方法)
外交的な「拡散性」と、内向的な「保全性」。両方とも気質に由来する因子でありながら、正反対の性質を持ちます。
それゆえ、「拡散性」の高い上司が「よかれ」と思って行う指導は、「保全性」の高い部下には劇薬そのもの。
ただし、正しく服用すれば、部下の飛躍的な成長を促す特効薬になり得ます。
「拡散・上司」×「保全・部下」
「拡散・上司」が「保全・部下」を指導する事になったら、次の点に注意して下さい。
まず、部下を不安にさせないために、ステップごとに「何をするか」「どれくらいかかるか」を示す必要があります。先に見通せる状態にしておくことで、部下を安心させます。
また、部下が不安で立ち止まった時、急かすのではなく、もう一度本人が「大丈夫」と自信が持てるまで徹底的に同じことを繰り返し体験させるとよいでしょう。
そして、少しずつ難易度を上げていき、スピードも早くしていきます。負荷を与えないのではなく、少しずつ与える事が重要です。
ただし、2年目からは、異質なタイプによる指導が部下の成長には必要です。
1年間の学びを否定せずに、幅を広げることが出来るからです。「こんなに違う考え方や切り口があるんだ」と気づくことは、学びにつながります。
- 「拡散性」は体験から学び、「保全性」は知識を体系化しながら学ぶ
- 「拡散・上司」が自分のやり方で指導すると、部下を潰すリスクがある
- 「保全・部下」は体系化を活かして、上司の無茶振りを成長の糧に変えよう
「保全・上司」×「拡散・部下」
「保全・上司」が「拡散・部下」を指導する事になったら、次の点に注意して下さい。
まず、「拡散性」の高い人の学習スタイルを改めて押さえておくと、「拡散性」の高い人は、失敗する事を厭わないので、まずやってみます。失敗しても気にしません。またすぐにやります。
そして、うまくいっても、同じ事を繰り返したくないので、次は違うやり方で成功させようとします。
何度かやるうちに、「なるほど、こんなことか」と物事の全体像を概念的に理解していきます。
つまり、一つひとつを正解と照らし合わせて確認し、絶対的な結論に導こうとする演繹的なアプローチではなく、仮説・検証を繰り返す帰納法的なアプローチです。
「拡散性」の高い人は、「好き」や「興味」が最大の学習動機になりますので、「拡散・部下」をやる気にさせたいなら、本人の好きなやり方で任せるのが一番です。
あるいは、部下が「つまらない」と思っている仕事を、「こんな面白いこと」に変えてみる。部下が興味を持つように仕事の意味付けを変える事が、「拡散・部下」を動かす唯一の方法です。
- 積み上げ型の学習スタイルを「拡散・部下」に強要すると、興味を失う
- 「拡散性」の高い人は、答えのない課題や未踏の挑戦にワクワクする
- 「拡散・部下」の好きにやらせるか、仕事の意味づけを変えるとよい
「凝縮・上司」×「受容・部下」
「受容・部下」が「凝縮・上司」を上司に持つ事になったら、次の点に注意して下さい。
実力はあって一目置かれている。けれど、不器用な性格ゆえに活躍の機会に恵まれていない。あるいは、本当はいい人なのに「気難しい人」と誤解されて敬遠されている。
あなたの職場にも、おそらく1人くらいこんな上司がいませんか?
「凝縮性」が高い人は、自分と似た個性の人のことは理解出来ても、違う個性の人のことは理解しにくいのです。特に、日本人では少数派の「凝縮性」の高い人のことは「気難しい」とか「いつも怒っている 」などと誤解されがちです。
そのため、「凝縮性」の高い人は、近寄りがたい雰囲気が邪魔をして、短時間では理解されにくいし、評価もされにくいかもしれません。
でも、ひとたび懐に入り込んでその人柄を知れば、責任感が強く、いざというときに頼れる存在であり、最後まで守り抜いてくれる人であると分かります。
これは組織の中では貴重な存在です。融通の利かない自分勝手な人とは違うのです。
ちゃんと中身のある人かどうかを見極めるポイントは以下の点に着目してみて下さい。
- 顧客や世の中のあるべき姿に対して、真摯に向き合っている
- 私心なく、正義を貫こうとしている
- 自分勝手、独りよがりではない
- 「組織の論理」に媚びていない
以上を踏まえて、「凝縮性」の高い人を上司に持ったら、是非理解者になりましょう。そして、他のメンバーとの橋渡しを買って出て下さい。
今は活躍の場がなく、ストレス状態のためネガティブな面が見えているかもしれませんが、活躍の場さえ与えられれば、一気に良い面が表出されるはずです。
最後までやり抜く責任感の強いリーダーとなるでしょう。
- 「凝縮性」の高い人は、こだわりが強いため威圧的に映ることも
- その素顔は、決断力に優れ、責任感が強く、頼れる相手
- 理解者を得ることで、リーダーとして活躍が期待できる
「弁別・上司」×「受容・部下」
「受容・部下」が「弁別・上司」を上司に持つ事になったら、次の点に注意して下さい。
相手の喜ぶ顔が見たくて、周りに対して世話を焼きたがる「受容性」の高い人に、全く反応を示さないのが「弁別性」の高い人です。かといって反応しないのは、怒っているからでも、相手を嫌っているからでもありません。
「弁別性」は黒か白か、0か1かの「二律に分けていく力」のことであり、判断軸は「適切である」か「適切でない」かなのです。
そのため、状況や心理状態をどちらかにはっきり分けて、無駄なく合理的に進めていこうとしますので、「弁別性」の高い上司の指示は、定量的で的確であり、普段は冗談も言いません。
「弁別性」の高い上司とうまく付き合うには、「ドライであることが普通」であることを理解することが重要です。
「受容性」の高い部下からすれば、良いのか悪いのか、「何らかの反応が欲しい」と思うかもしれませんが、順調な状況では何も反応しません。
「反応がないのは良いメッセージ」と解釈すれば、自分の存在をないがしろにされているわけではないと理解が進みます。
一方で、順調に進んでいない場合は、質問攻めに遭います。
この場合も、上司は問い詰めているのではなく、自分のプランのどこが間違っていたのかを検証したいがため、徹底的に情報を集めているのです。
上司は純粋に「理由が知りたい」のだと理解することです。理由が分かって腑に落ちれば、何もなかったかのように冷静で、改めて計画を立案してくれる状態になります。
対策として、「弁別性」の高い上司に悪い報告をしなければならない場合は、自分なりにきちんと原因を突き止めておくとよいでしょう。
原因が突き止められない場合は、データを揃えておきましょう。同じデータに基いて議論が出来れば「弁別性」の冷静沈着な良い部分がクローズアップされて、頼りがいのある上司に映るはずです。
- 「弁別性」の合理主義は、相手を思いやる「受容性」には冷たく感じられる
- 感情で寄り添うより、合理的に目的達成を支援するのが「弁別性」の優しさ
- 「弁別・上司」にデータや根拠を揃えて報告・相談すると、力になってくれる
組織理解(目指すべきリーダー像)
リーダーのあるべき姿とは、どのようなものでしょうか?
「決断できる、強いリーダー」を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、FFS理論ではそうではなく、その人の個性を活かしたリーダー像があると考えます。
ハーバード大学ビジネススクールのジョン・コッター教授は、リーダーの役割を「変革を成し遂げること」と定義し、リーダーシップに必要な要素として次のキーワードを挙げています。
- 長期的展望
- 戦略展開
- 攻撃的手法
- 組織の変革志向
- ヒートアップ(意思鼓舞)
- 投機的リスクに挑戦
- 創造/革新
- 変化志向
- 納期短縮
- 品質向上
よくイメージされる「強いリーダーの決断力」は、訓練や立場によって習得できる技術ではなく、「生得的に持っていた潜在的な能力が、子供の頃からの体験で鍛えられたもの」であり、決断力に限らず、いわゆる「リーダーシップ」に必要な要素として挙げられたキーワードは、ほとんどがこれに当てはまります。
これは「生得的な能力がなければダメ」だと言いたい訳ではありません。
リーダーシップが生得的な潜在能力に強く影響を受けているのであれば、誰もが「強いリーダー」になる必要はありません。その人が持っている個性を、どうリーダーシップに活かすかが重要なのです。
「受容・保全」タイプのリーダーシップ
日本人に多く見られるのは、「受容性」と「保全性」の因子が高い人達です。
周りや相手を柔軟に受け入れて(受容性)、組織化させつつ継続的に維持改善していく(保全性)個性を持っている人達が多いとも言い換えられます。
このように、日本人の多くの人が持っている「受容性」と「保全性」の個性を活かすには、「メンバーを見守り、メンバーの自立を促すような関わり方」をするリーダーだという事が分かります。
ハーバード大学ビジネススクールのジョン・コッター教授は、「受容性」と「保全性」の因子が高い人の個性を活かしたリーダーシップを「サーバント・リーダーシップ」と定義しています。
「サーバント・リーダーシップ」に必要な要素として次のキーワードを挙げています。
- 傾聴
- 共感
- 癒し
- 気づき
- 説得
- 概念化
- 見通し
- 予見力
- 執事役
- 人々の成長にかかわる
- コミュニティづくり
「これなら自分にも出来そう」「いつも実践している事だ」と感じた人も多いのではないでしょうか。
何故なら、サーバント・リーダーシップに求められる素質を、多くの日本人は潜在的に「持っている」からです。
「受容・保全」タイプのリーダーシップをまとめると、以下のようになります。
面倒見がよく、協調性があり、チーム環境を整え、改善を繰り返しながら全体の底上げを図りつつ、チームを運営していく事が出来ます。部下を見守りながら、それぞれに合ったサポートををしながら育んでいく。
そんな安心感を与えられるリーダーになれるでしょう。
- 変革型の強いリーダーシップは、日本人の多くには向かない
- 「受容・保全」タイプは、サーバント型リーダーを目指すのが良い
- 傾聴と共感による合意形成、仕組化によるチーム運営に強みを発揮しよう
「凝縮性」タイプのリーダーシップ
「強いリーダーシップ」の基となる因子の一つが「凝縮性」です。
ただし、使い方を間違えると、強みであるはずの責任感や親心が相手に伝わらず、ただの高圧的な人と思われてしまします。
「凝縮性」の高い人は、これから述べるたった一つの事を心がけて下さい。それだけで、部下に信頼されるリーダーとなれます。
自分が決めた事や、主張する理由を丁寧に説明する事です。なぜ、この価値観にこだわっているのかを理解してもらう事です。
あまりに当たり前ですが、それが出来ないくらい「凝縮性」タイプの人の「自分の信念」へのこだわりは強いのです。
そんな自分のこだわりは「実は、小さい、狭いものではないか」と真摯に省みることも大事です。
上司として部下を導く立場であれば、広い視野を持ち、相手に合わせたコミュニケーションも必要です。自らを広げていくことが「凝縮性」タイプのリーダーシップとも言えます。
- 「凝縮性」タイプは、「こうあるべき」という強い信念のもと物事を進めがち
- 「こうあるべき」の理由を知らされない部下は、上司をただ「高圧的」と感じる
- 「凝縮性」タイプは、「こうあるべき」の理由を丁寧に説明しよう
「受容性」タイプのリーダーシップ
「受容性」タイプのリーダーの強みは、相手の気持ちに寄り添いながら、部下を支援出来る事です。
しかし、その面倒見の良さは、一歩間違えると、自己満足のためのお節介になりかねません。
「受容性」の高い人は、無理難題や仕事の無茶ぶりにも、なんとかして「上司の役に立ちたい」「同僚を成功させてあげたい」と思い、成果を出そうと奮闘します。
そして、自らの強みを発揮して無理難題をやり遂げた時、その人はより高いレベルに引き上げられています。
この体験がある人は、「自分の限界を超えることで人は育つ」ことを、身をもって知っていますから、上司になった時には、その場限りの優しさで手を貸すことは部下のためにならないと分かっています。
相手の可能性を見極めて任せたのであれば、「信じて待つ」ことが最善と理解しているのです。
- 「受容性」タイプは、相手から感謝される実感を求めて、お節介しがち
- 過剰なお節介は、部下から成長の機会を奪ってしまう
- 部下を信じ、部下の自立を見守ることに「受容性」の本領を発揮しよう
「拡散性」タイプのリーダーシップ
「拡散性」タイプのリーダーの強みは、「飛び出していこうする力」です。
興味がある事は、まずやってみます。人目が気にならないため、「出来なかったらどうしよう」と不安に感じる事もありません。軽々と行動に移していきます。
また、「拡散性」タイプは「出来た!」という成功体験を重視しません。むしろ、「出来た」ことは、もう続けたくないのです。
「出来た」ことによって「自分が成長したと実感」するかどうかよりも、「面白さが失われたか、それともまだ面白いのか」が大事。
つまりは「難易度が高いほど燃える」のです。だから失敗を繰り返しても、興味が湧く限りは臆することなくトライし続けますし、順番にもこだわりません。階段を抜かして飛び上がるような成長曲線を描くのです。
- 「拡散性」タイプは、守・破・離を通して「オンリーワン」を目指す
「保全性」タイプのリーダーシップ
「保全性」タイプは、人目を気にして失敗しそうな挑戦に一歩を踏み出せない一面があるものの、一度踏み出すと決めたなら「出来るようになる」まで努力します。
努力を惜しまないのは、「保全性」タイプのリーダーの強みです。
「保全性」タイプの人は、しっかり準備して、着実に物事を進めようとします。徹底的に情報を集めて、抜け漏れなく対策を考えて、ようやく安心して行動に移すことが出来ます。
要するに、「やり切った感」が重要なのです。事前に徹底的に調べ上げて「ここまで調べた人は自分以外にはいない」と思える事で、自信につながっていきます。
「保全性」タイプの人が「自信」を持てるようになるには、「出来た」という成功体験の積み重ねが必要です。その成長プロセスは、山登りに喩える事が出来ます。
鍵となるのは、「自分の専門領域における知識の体系化」です。
「保全性」タイプは、コツコツと積み上げる事で力を発揮します。従って、守備範囲を「浅く広く」するよりも、専門領域を見極めて、その範囲内での知識を積み上げていく学習方法が向いています。
「この領域では誰にも負けない」と言えるくらいの豊富な知識量が、自信につながります。
「保全性」タイプの人がリーダーシップを発揮するには、「型」を研ぎ澄ませていく事が大切です。
型があるから強いし、ブレない。型の存在が絶対的な自信につながっていきます。
- 「保全性」タイプは、成功体験の積み重ねが自信につながる
- 自分の型を磨く事で、先の見通しが立ち、力強く前進出来る
「弁別性」のリーダーは登場しないのか?
結論から言うと、5つの因子のうち「弁別性」だけが特殊な因子だからです。
他の4つの因子を見てみると、「拡散性」と「保全性」は「気質」に由来する因子です。
動機となるのは「好き」や「嫌い」、「面白そう」といった情動であり、それに対して「すぐ動く」のか、「準備してから動く」のかで比較出来ます。
また、「凝縮性」と「受容性」は、どちらかと言えば「社会的」に影響を受ける因子です。
判断基準が「自分軸で正しい」なのか、「相手軸で、それを受け入れる」なのかで比較出来ます。
それに対して、「弁別性」だけが独立しています。「弁別性」は、その時の情報に基づいて、物事を「黒か白か」「0か1か」のどちらかにはっきりと分ける因子です。
判断の基準は、ほとんどの場合は合理性で「右側が合理的か、左側が合理的か」と考えます。
つまり、あくまで判断や判定をするのみ。
弁別性は、その目的・目標に対して「無駄なく、確率高く、最短で行くため」の因子です。
リードする目的・目標を持っているわけではなく、常に「どちらか」であり、データが変われば「右」が「左」に変わるのです。
だからといって、「弁別性」がリーダーに不要の因子だと言いたい訳ではありません。一般的には、「弁別性」タイプの人は、リーダーというよりも参謀タイプが多いというだけです。
本書を読んでみての感想
本書冒頭に記載されている「グーみたいな奴がいて、チョキみたいな奴もいて、パーみたいな奴もいる。誰が一番強いか答えを知っている奴いるか?」が全てではないかと感じました。
FFS理論では、5つの因子の優劣によって個性を判断しますが、その中で一番優れてる個性というものはないと本書を読んで感じた事です。
人にはそれぞれの個性があって、足りない部分を他の個性の人が補完しながらチームを形成したりしています。
ですから、本書でのFFS診断で判明した個性を素直に受け入れて、その個性を活かす手段を身に付けた方が素晴らしい人生を歩めるのでは?と考えさせらる内容でした。
人によっては、受け入れがたい個性の診断結果がでたかもしれません。しかしながら、自分の強みを知る手段の一つとして考えてみてはどうかと思うのです。
「自分の特性を理解し、強みを活かし、弱みは仲間と補完している」…そんな関係って素晴らしいんじゃないかって思うのです。
「自分の特性を知り、強みを発揮出来る状況を逃さず、弱いところは助けてもらう」ことを意識すれば、どんな人にも成功をつかめる可能性が広がると思います。
その他参考記事
人気コミック「ドラゴン桜」とFFS理論を組み合わせた勉強方法を紹介しています。
あなたが「勉強が出来ない」と思っているのは、勉強の「型」が身につきにくい方法でやっているからかもしれません。
FFS理論をより深く学びたい人には並行して読んでみる事をお薦めします。
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